20-21シーズンプレミアリーグ第29節の延期分は、2-1でスパーズが逆転し勝利をおさめた。メイソン新指揮官にとっては初勝利に終わった。
試合詳細
フォーメーション

スパーズベンチ
ハート、サンチェス、ウィンクス↑73、ラメラ↑79、シソコ、デレ・アリ、ベルフワイン↑83、タンガンガ、ヴィニシウス
セインツベンチ
フォースター、ステーフェンス、レドモンド↑84、ジェネポ↑67、南野、ディアロ↑68、エンルンドゥル、フェリー、ジャンケウィツ
スコアラー
スパーズ
60:ベイル
74:ソン・フンミン(レギロン)VAR
90:ソン・フンミン(PK)
セインツ
30:イングス(ウォード=プラウズ)
メンバー選考について
両チームのメンバー選考を見ていこう。
トッテナム・ホットスパー
スパーズはメイソン新指揮官ということで予想のしにくいメンバー選考だったが、ふたを開けてみると前任者のうまくいっているときをベースにメンバーを選んでいたように感じた。
ロチェルソとエンドンベレの同時起用の意図は、前線からのプレッシングがサウサンプトンは得意なため、それをパスやドリブルで中盤を支配して回避しながら試合を組み立てていきたいためではないか。
そして守備時に不安があるベイルが起用されたのは、単純にケインが不在の状態によるもので、得点力を欲したからだろう。ベイルがいることによってサイドからの攻撃に厚みをもたらすことができ、ケイン不在による得点力を守備を多少犠牲にしても補おうとしたのだろう。
サウサンプトン
サウサンプトンは前回の試合から4枚入れ替えた。両サイドハーフのポジションと左サイドバックとアダムスがレドモンドに代わって2トップに。
この選手変更に関しては、ゲーゲンプレスという消耗の大きな前線からのプレスを仕掛けることがセインツの売りであるため、それを遂行するにはフレッシュな選手が必要だったからだろう。そして南野が選ばれなかったのは、サイドからの攻撃に比較的弱いスパーズに対して、中央に絞ってプレーする南野ではサイドに厚みを持たせることが困難だからだろう。
そのためこの試合では縦への突破に魅力のあるウォルコットとテラが選ばれていた。
試合内容
試合はどちらのチームも前がかりにプレッシングを仕掛けて、前線からショートカウンターを狙うチーム同士の対戦だった。前半攻勢に出ていたのはサウサンプトン。
開始わずか2分でサウサンプトンのFKからのリスタートに準備が出遅れたスパーズの一瞬の隙を見逃さず、テラがクロスボール。これをサリスがヘディングで合わせるもののGKロリスがビッグセーブで、さらにこぼれ球のアダムスのボレーシュートもロリスがビッグセーブをみせた。いきなり先取点を与えることなく、大ピンチを免れたものの、早くも不安の残る展開となった。
さらに12分にもスパーズ左サイドからKWPが上がってきてチャンスを作り上げた。このサウサンプトンの攻撃時に多くの人数が参加することで、厚みのある攻撃に手を焼くスパーズだった。
そして30分。試合が動く。スパーズ右サイドからのコーナーキックをウォード=プラウズが今までと異なるボールを蹴り込み、オーリエがマークに付いていたイングスがうまく合わせてゴールポストをかすめてゴールイン。さすがのロリスもノーチャンスだった。
前半はサウサンプトンがスパーズにボールを持たせている、といってもいいような展開が続いた。スパーズはチャンスらしいチャンスを作れず前半は終わった。
後半はベイルの立ち位置が大外で張っていたのをややインに絞る形にして、オーリエにもオーバーラップを仕掛けさせるように。これが功を奏したのか60分。ルーカスのシュートがブロックされたこぼれ球をインに絞っていたベイルがキープ。これを冷静に巻いてサイドネットにシュートを放ちゴールイン。これによりスパーズは同点に。
サウサンプトンのプレッシングにやや陰りが見え始めたのと、スパーズの選手たちの動きやポジショニングに修正があり、上手くプレスをかいくぐるようになる。すると74分。中央のロチェルソが上手くマークを剥がし左サイドのレギロンへスルーパス。これをグラウンダーのクロスで中央のソンへパス。冷静に左足で流し込んだかに見えたが、これはルーカスがオフサイドポジションでGKの視野をふさいだとのことで、VARで取り消しに。
その後後半終了間際でこのまま試合が終わりそうな雰囲気だったが、スパーズの左サイドからのコーナーキックから、ハンド疑惑とペナルティエリアライン上でのレギロンへのファールでPKを獲得。これをソンが冷静に決めて2-1。そのまま試合は終了した。
試合のポイント
この試合のポイントを見ていこう。スパーズのメンバー選考、サウサンプトンのプレッシング、後半からのスパーズの修正点の3つだ。
スパーズのメンバー選考
この試合での注目ポイントだったのは、間違いなくメンバー選考だったのではないか。突如のモウリーニョ解任騒動からメイソン暫定指揮官の誕生。非常に目まぐるしい1週間だった。前監督に対して何人かの選手が不満を持っていたこと、そしてメイソンが現役時代に同期だったり一緒にプレーしたりした経験のある選手たちがいる中でのこの29歳の新指揮官の誕生。メンバー選考に注目が集まるのは偶然ではない。
エースのケインがケガで離脱していた中で迎えた大事な初陣。選んだメンバーは前任者が勝利を積み重ねていた時のメンバーを中心に選んできた。そしてベンチにはウィンクスやベルフワインといったモウリーニョ監督時代になかなかベンチメンバーに加わることのなかった選手たちも入った。
スタメンのメンバー選考は上記で述べたのでここではあまり書かない。戦術的な理由があったとはいえ、今後のメンバー選考の1つの基準が垣間見えた。それはモウリーニョ時代よりも前線からのプレスに力を入れていることだ。だからこそダイアーをCBに選んだのではないか。
彼はこの試合で抜かれてしまうことがあったものの、積極的に前へ出て攻撃の芽を摘んでいた。それだけでなく前任者の時と比較してより攻撃時の参加比率が高くなっていた。特に左サイドバックのレギロンを追い越す動きや期を見たオーバーラップは今まで見たことがなく非常に斬新だったが、効果的だった。
この前線からのプレッシングに適応できる選手が今後はスタメンを獲得できるようになってくるのではないだろうか。週末にはいきなりカラバオカップファイナルを迎えるため、この大一番でどのような試合運びができるのかに注目が集まる。
サウサンプトンのプレッシング
この試合でサウサンプトンはいつも通り積極的に前線からプレッシングを行っていた。だが単純にDFに対して追いかけまわすのではなく1つの意図を感じ取れた。それはCBにはあまり積極的にはいかず、サイドにボールが出た時に一気に人数をかけてプレスを行っていた点だ。
その際にはCBからボランチのポジションへのパスコースを切りながら寄せていた。これによりエンドンベレやホイヴィアはやや下がり目にポジション取りを行う必要があり、攻撃時に1つ手前からしかパスが出せなくなった。サイドバックに出ると、そのタイミングで2トップの一角とサイドハーフが寄せに行き奪い取る。これを非常に徹底しているように感じ、スパーズがかなり苦戦を強いられていた。
しかし後半からは、そのプレッシングも徐々にうまくいかなくなってくる。その理由は下記でも述べるがスパーズがポジショニング修正したことと、やや体力の低下があったように感じ取れた。ゲーゲンプレスは1人が後手を取ってしまうとそこから後手後手に回ってしまう。連動がカギになる前線からのプレッシングだ。そのなかで体力的に低下した選手がいれば必然的に連動しにくくなり、回避されるようになる。
私が思うに、イングスのケガは想定外だったが、ハーゼンヒュットル監督はもう少し早く選手交代を行っても良かったのではないかと見ている。
後半からのスパーズの修正点
スパーズは前半、ベイルが大外に張ってポジション取りをし、オーリエはあまり上がらないような攻撃を見せた。逆に左サイドはソンがインに絞り気味でレギロンは積極的に攻撃参加を行っていた。
後半からはベイルもソンも比較的インに位置取りし、両サイドバックは攻撃参加を見せていた。これによって後半からは比較的シュートまで持ち込むことができるようになっていたが、果たしてそれが良かったのだろうか。
私が気になったのは、全員が内側に絞りすぎていて、かなりコンパクトな守備をサウサンプトンにさせていたことだ。最終的にオフサイドになった74分のシーンでは、オーバーラップで上がってきたレギロンですらペナルティエリアの外側のライン付近だった。あまりにもコンパクトな攻撃だと感じ、中央が渋滞気味だった。
結果的に勝利したからこそ良かったものの、この攻撃の組み立てはセインツよりも引いて守ってくるチーム相手には厳しい戦い方になるのではないか。良くも悪くも、週末のカラバオカップ決勝が非常に楽しみであり、そこでメイソン新指揮官の手腕がみられるだろう。
次の対戦相手
次の試合は、日本時間4月26日の0時30分からカラバオカップ決勝でマンチェスター・シティとの大一番。シティは現在リーグ戦でも1位。CLも勝ち進んでいるチームだ。モウリーニョ解任やスーパーリーグ構想などチーム内でゴタゴタが相次いだ今週。この試合には万全の状態で挑んで勝利したいものだ。
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