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【スタジアム問題】天然芝と人工芝はどちらが良いのか?

サッカー記事
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私は芝生管理者になり、2025年で早くも8年が経過しました。

その中で様々な人たちに合うことが多くなりましたが、よく聞かれる質問として、スタジアムに天然芝と人工芝、どちらがよいのか?

近年でも、天然芝の維持費や利用頻度の見直しの話が出てきており、その中で人工芝に変えた方がコストパフォーマンスが良いのでは?という考えがあるのを、私は認識しています。

特に最近のブログでもよく書かせていただいていますが、日本国内では新スタジアムの建設の話もあり、ますますその注目度は高くなってくるでしょう。

結論から申し上げますと、これは選択の問題で、それぞれに適した環境があり、どちらにも一長一短があります。

個人的な意見としては、プロフェッショナルなスポーツ選手が利用するのであれば、天然芝が望ましいと考えます。

今回は、そんな究極の質問、天然芝と人工芝、どちらが良いのかについて書いていきます。

このブログの作者Ikumiはアーセナルで
グラウンズパーソン(グラウンドキーパー)として働いています。
今までも芝生に関しての記事をたくさん書いてきましたので、
気になる方々はぜひ過去の記事を遡ってみてください。
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Twitter: @Ikumi_grounds

ブログの作者Ikumi

はじめに・・・

まずはじめに、私の考えるそれぞれの項目ごとに、ハイブリッドターフ、100%天然芝、100%人工芝の違いを簡単にまとめてみました。

項目ハイブリッド
ターフ
100%天然芝100%人工芝
耐久性高い中(荒天に弱い)非常に高い
クッション性比較的高い高い低め(最新型は改善)
メンテナンス頻度高い(定期的リノベーション必要)高い低い(定期ブラッシングとチップ補充)
イニシャルコスト高い高い
修繕スピード中(ハイブリッドターフも補填)高い低い
ランニングコスト低い
プレー感(天然芝と比較して)天然芝に近い天然芝そのもの異なる
環境負荷中(産廃処理あり)低い高い(マイクロプラ問題)

ではここから、今回は天然芝と人工芝に関して、それぞれをみていきましょう。

天然芝にあって人工芝にないもの

まず最初に、天然芝にある特徴で、人工芝にないものを上げていこうと思います。

①自己修復可能

天然芝であることのメリットとして、自己修復できることにあると思います。

例えば、仮に天然芝にダメージがあったとしても、芝生の生育とともにそのダメージを消してくれたり、人の力でその場ですぐに直すことも可能。

一方で人工芝は、利用頻度を高くできるといっても、永遠ということではなく、時として破けてしまう場合もあります。

その場合、その場所を修繕する必要が出てきますが、破れた場所の周りを切り取って新しい人工芝を貼るケースが多いかと思います。しかしやはり気になるのはその繋ぎ目。

繋ぎ目無くキレイにしようとしたら、全体の張替えが必要になってくるでしょう。

人工芝の張り替え費用4千万円「現役生にお願いしたい」、「無理でしょ」 公立高にのしかかる問題 愛知
人工芝グラウンドがピンチ。愛知県立熱田高校のグラウンドに敷かれている人工芝をめぐり、学校側がある大きな問題に直面しています。

最近見たニュースで印象的だったのは、こちら。

2022年に完成した人工芝でしたが、2025年と3年経過した段階で、張り替えを検討しているとのニュース。こちらはバンテリンドームの人工芝の再利用とのことですので、もともと人工芝としてクオリティを維持する寿命は長くなかったのでしょう。

人工芝は天然芝とは異なり、繊維が成長してくれることはありませんから、1度失ったものは戻ってきません。

これが天然芝と人工芝で大きく異なる、そして天然芝における最大のメリットかと思います。

Before
After

②環境や人体への貢献

2つ目として、環境への貢献も大きいでしょう。

近年、地球温暖化が進んでいるといわれている中で、緑、植物の存在は極めて重要と言えます。

その点、天然芝においては、光合成によって二酸化炭素を吸収し、酸素を排出したり、ヒートアイランド現象の緩和にも貢献します。

特に夏場の人工芝でサッカーをやったことがある方なら分かるはずです。暑すぎ。スパイクのソールが溶けるんじゃないか、と思わせてくれる暑さが人工芝から感じ取れ、とてもスポーツができるような環境とは言えません(日本国内において)。

天然芝はその点、照り返しが人工芝よりも少ないないため、暑さ対策はしやすいでしょう。

他にも人工芝の場合は、マイクロプラスチック問題であったり、ゴムチップ(補填材)が環境、そして人体にも悪影響があるという報告がなされています。(近年では無害の補填材も使用されるようになっており、アーセナルのアカデミー施設ではイタリアから無害の物を輸入しています)

Just a moment...
アーセナルで使われている人工芝の補填材

「ケガ」という観点では、先ほどの高校の例にあるように、人工芝繊維が短くなったり、補填材が無くなればスリップするケースが多くなり、ケガにつながるリスクも。

天然芝では、地面を柔らかくしたり、スパイクが刺さりやすくするなどの作業が可能なので、常にその環境によって柔軟に適応できる点は、天然芝にしかない特徴でしょう。

人工芝にあって天然芝にないもの

今度は、人工芝にあって天然芝にないものをみていきましょう。

①メンテナンス頻度の低さ

人工芝による圧倒的なメリットとしては、メンテナンス頻度が低くできることでしょう。

天然芝は頻度が多い時には、毎日芝刈りを行い、定期的な肥料散布や散水費が必要です。

一方で人工芝は、月に数回の人工芝へのブラッシングや掃除、そして年に1度(これはイギリスのケース)補填材を投入することだけ。

ブラッシングを行う理由は、チップの偏りをなくして、平坦なピッチを維持するためと、人工芝繊維が寝てしまっては意味がないので、繊維を起こすため。

メンテナンス頻度がかなり減らせるのは、人工芝の大きなメリットと言えます。

②利用頻度を最大にできる

2つ目は、最大限ピッチを活用できる点。

天然芝の場合、どうしても回復に時間が必要ですが、人工芝の場合、1日中ずっと使い続けたとしても、翌日も同じように利用することが可能。

利用頻度を最大限にできるのは、利用者にとって大きなメリットと言えるでしょう。

ただし、最初のところでもお伝えしましたように、永遠に続くものではなく、破れてしまったり、日々の変化には気づきにくいですが、人工芝繊維が消耗していったり、チップが無くなってしまったりするので、その点は認識しておく必要があります。

結論・どっちがいい?

私はグラウンズパーソンという立場のため、ひょっとしたら人によってはポジショントークと捉える方もいらっしゃるでしょうが、天然芝を多くのケースでは推奨したいです。

その理由としましては、利用者に対して安全性を担保できると考えるためです。

たしかに、人工芝にある利用を最大限にできるというのは、大きな魅力に感じます。ただし、天然芝においては「なぜ休ませる必要があるのか?」この点に注目していただきたいです。

天然芝に養生が必要なのは、プレーする方々のためであると考えます。選手たちに満足いくプレーをしてもらいたいからこそ、ケガをしてほしくないからこそ、芝生にも回復期間が必要です。

人工芝は、削れて行ってしまえば、自然に回復することはありませんし、どんどんダメージは蓄積していって、破けてしまう恐れも。

私は日本でサッカーやソサイチをするために、様々な人工芝を見させていただきましたが、場所によっては人工芝を張って終わりといった感じで、メンテナンスを一切しないというところも珍しくありません。

そのせいか、チップはほとんどなく、繊維は寝てしまい、もはやコンクリートに緑色の絨毯を敷いただけといった感じのところもしばしば。

その所有者が、ブラッシングやゴムチップの補充といったことを高頻度で行うとは思えず、また、破けた場所があってもずっと放置しているといったケースもあり、安全性が担保できるとは思えません。

そういったことからも、少なくともプロフェッショナルスポーツであれば、安全性が担保されている天然芝を私は推奨します。

もちろん、その維持管理は芝生管理者の技術、そして管理費用により異なりますので、しっかりとした将来を見据えた投資も必要です。

その管理費用の面でも、先にお伝えした件では10年ごとの張替えで4000万円ほど、年間200万円から300万円ほどの管理費用が必要とのことです。張り替える頻度が10年より短くなれば、当然その費用は増えます。人工芝でも意外と費用が必要だと感じませんか?

長期的な目線でいえば、人工芝が破けてから修復を行うのではなく、天然芝で常に平坦なピッチを用意しておけば、ケガが発生するリスクは人工芝よりも少なくなるでしょう。

今回ご紹介した例にあるような、学校教育の場で天然芝か人工芝、どちらを選ぶべきなのかというのは、正直悩みどころかなと。

利用頻度が多くなるであろう学校教育の場では、人工芝の方がメリットは大きいでしょう。ただし、突発的な全面張替えのような出費を、いきなり用意できる機関ではないため、それなら年間のメンテナンス費用をしっかり定めた天然芝を用いるのもありかなと思います。

他にも、天然芝であれば、学校の教育にも向いている気がします。

例えば芝生は植物の中でも珍しく、夏芝冬芝のように種類の中でも生体が大きく異なる植物です。

学ぶ場としては最適な標本でもあり、そして芝生を大切に扱う、芝生を管理するという職業があることを認知できるのも、適していると言えます。

とはいえ、天然芝では利用頻度を増やすことができないのは難点なので、学校教育の場では天然芝なのか人工芝なのか、結論を出すのは難しいです。

学校の教育方針と設備投資能力次第と言えるでしょう。

まとめ

今回は天然芝か人工芝なのか、について書いてきました。

結局は、いかに選手たちの足元に投資することができるのか。これに尽きるかと思います。

そして勘違いしてほしくないのは、人工芝であっても永遠のものではないという点。

天然芝も人工芝も、安全性とプレイングクオリティを確保するには、それ相応のメンテナンスが必要であることを忘れてほしくはありません。

そのうえで、人工芝であっても、しっかりメンテナンスを行いチップを補充すれば、長く使うことができます。

そして個人的には、このブログ記事を書いている2025年9月の段階では、天然芝を推奨したいです

理由は常に管理者が芝生のクオリティを見守っていて、最高のピッチコンディションを用意しているから。安全性が担保できる点です。

我々芝生管理者ができることは、「このクオリティなら人工芝の方がよくね?」と思われないように、日々学びそして新しいことに取り組みつつ、最高のクオリティのピッチを提供すること。これに尽きます。

近年は気候変動で、芝生の管理も非常に苦戦が強いられていますが、そこに対応できるだけの管理者になれるように、私も精進します。

余談ですが、工業製品というのは日々、クオリティが進化していくものなので、将来的にどうなっていくのかという未来まではさすがに分かりません。自己修復する繊維が登場!?なんていう世の中になる可能性もありますからね笑

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