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円安、燃料費高騰など経済状況が日本の芝生管理に与える影響

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サッカー記事
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昨今、多くの方が少しずつ実感してきたであろう円安と物価高。

今回はそれらが日本の芝生管理に対してどのような影響を与えるのか。このあたりについて書いていきたいと思います。

 

このブログの作者Ikumiはアーセナルで
グラウンズパーソン(グラウンドキーパー)として働いています。
今までも芝生に関しての記事をたくさん書いてきましたので、
気になる方々はぜひ過去の記事を遡ってみてください。
SNSも発信中。気になる方はぜひフォローを!
Twitter: @Ikumi_grounds

ブログの作者Ikumiより

円安はどれくらい進んだ?

分かりやすく、私の住んでいるイギリスのポンドを例にします。

私が日本からイギリスに拠点を移した2022年9月のタイミングでの£1は、だいたい160円前後でした。

2023年5月、このブログを書いた1年前は£1=170円台で推移しています。

しかし、2024年5月現在は為替介入などがあり190円台まで一時期下がりましたが5月中旬には£1=195円前後で推移、そして月末にはついに200円台に到達しています。

たった1年で£1=25円、2年だと40円も円安に進んでいます。

これがどういうことか簡単に説明しますと、例えば私の所属するアーセナルのチケットが1枚£100で購入できたとして、2年前であれば16000円で購入できたものが、現在は20000円、4000円追加で支払わないと購入できないということになります。

当然桁が大きくなればなるほど、その日本円における負担はもっと大きく膨れ上がります。£1000のものであれば4万円追加で支払わないといけません。

日本国内の肥料の現状

日本国内における肥料の原料というのは、ほとんどが輸入に頼っている現状です。

肥料の三要素と言われる窒素(N)、リン酸(P)、カリウム(K)の原料となる尿素、リン酸アンモニウム、塩化カリウム。

尿素が4%ほど自国で生産していますが、残りの96%は輸入、他のリン酸アンモニウムと塩化カリウムは100%輸入に頼っています。

気になる方は農林水産省のページにありますのでこちらを確認してみてください。

https://www.maff.go.jp/tohoku/syokuryou/attach/pdf/221017-13.pdf

ちなみにイギリスのポンドだけでなく、この輸入先の国である中国人民元やカナダドルに対しても円安が進んでいる現状です。

原料を購入する際に日本円で支払う金額が高くなるということは、会社も利益を出さなければいけないので、当然日本国内での販売価格も上がることになります。

化学肥料の価格はどう?

こちらも農林水産省さんのページにありましたので、そちらを参考にしながら見ていきます。

https://www.maff.go.jp/j/seisan/sien/sizai/s_hiryo/attach/pdf/HiryouMegujiR5-5.pdf

原材料費が肥料の60%を占めているのが現状で続いて加工の費用16%、輸送費用5%となります。

輸入価格自体は、一時期のパンデミックの影響による輸出入ストップが緩和されたことで、一時よりもかなり価格が抑えられていますが、それでもパンデミック前と比較すると約2倍近く肥料の三要素における輸入金額が、上がっていることが分かるかと思います。

こちらは円ベースでグラフが作られていますので、おそらく為替に関しては考慮され、円安も影響していると思われます。

原材料費が肥料の価格の60%を占めている現状、この輸入価格は無視できるものではありません。

燃料費高騰はどうなる?

燃料費が高騰するとどうなるか。

先ほどの加工費用と輸送費用にはガソリンやディーゼルなど、石油を基にしたものが多く使われるため、ここでもより多くの金額を必要とするでしょう。

また、芝生管理においては芝刈り機やトラクターなどの芝生管理機械は、ガソリンやディーゼルを使って動くものが大半を占めています。

そのため、こちらも燃料費が高騰すれば影響を受けることになります。

燃料に関しては昨今の中東情勢やロシアの戦争問題など産出国の情勢が不安定なため、価格が読みにくくなっていますし、日本国内のガソリンへの補助金も間もなく終了と言われているそうですので、より厳しくなっていくでしょう。

結局、芝生管理にはどう影響があるの?

芝生管理はかなり多くの部分が、輸入物であったり燃料を使って動かすものに頼らざる得ない状況です。芝生管理に必要な機械なども輸入物が多くあります。

庭レベルの大きさであれば人力で何とかなるものでも、サッカー場ともなれば機械に頼らざる得えません。

必要な肥料の量も面積に比例して多くなっていきます。

となれば、肥料の高騰、機械購入費用の高騰は円安で免れることはできませんので、芝生管理費用に大打撃を与えることに繋がります。

そうなると、ピッチのクオリティを維持していくために様々なやりくりが必要になり、もっと肥料の量を少なくできるのか?それでもクオリティを維持できるのか?このあたりを検討して、いかにすべきかは重要なポイントです。

ただ、私が懸念している最も怖い影響は、限界までやりくりしたうえで、人件費を削らざる得ない状況になること。

例えば、若い人が就職したくても、ほかの業種を蹴って就職したいと思うほどの給与がないことなど。

それでもやりがいがあるから!、といったやりがい搾取はで若者を集めようとするのは愚の骨頂で、私の嫌いな言葉です。

残念ながら芝生管理者という仕事は、多くの人に人気がある仕事ではありません。むしろ人手不足が深刻とも言えます。

そのため本来であれば、給料を上げてでも多くの人を取り込んでいかなければ、まず注目されることはおろか、多くの人がなりたい職業の候補にも入らないでしょう。

実際に私の多くの友人は、誰かが芝生を管理しているんだろうけど、それが専門の仕事としてあるという認識が無かった、という人がほとんどでした。

だからこそ私は、ブログやSNS、メディアに出て発信を続けて少しでも職業について知ってもらいたいと思う次第です(適切な対価はいただきます)。

日銀はインフレ率2%を目安とし、今後もインフレが続いていくと仮定すると、管理費用もそれと同様に上げていかなければ、若い人が育たず、日本の芝生管理の未来は暗いと考えています。

日本国内でも多くのサッカークラブが誕生し、そのための練習場やホームスタジアムが必要になり、今後ますます芝生管理者の需要は高まると思われる中で、後継者がインフレにより育ちにくくなりつつあるのは大きな問題だと認識しています。

この点は日本中全てのサッカークラブ、もしくはグラウンドを所有している団体が考えていく必要があると思っています。

一方で・・・

確かに金額が大きければその分クオリティの高いピッチを目指しやすいでしょうが、残念ながらその金額に見合ったクオリティではないピッチが日本国内のもある現状。

そういった場所があると「芝生管理って金額高くなくてもいいんだ。」と、芝生管理者以外の方にとらえられてしまう恐れがあり、今後起こりうるインフレーションへの対策がしにくくなってしまうので、多くのグラウンズパーソンが、意識高く仕事に取り組んでいただきたいものです。

まとめ

円安、燃料費高騰など経済状況が日本の芝生管理に与える影響としては、まだまだ始まったばかりですので、今すぐというよりも長期的な目線で若い人が育ちにくくなる元凶になってしまう恐れがあると私は感じています。

また、ニュースでも話題になっていますが、少子化が続く中、選ばれる仕事と選ばれない仕事は、より明確なものになっていくだろうと思います。

若い人にどうすれば興味を持ってもらえるのか。やりがい以外の面で考えていかないと、サッカー界全体にとって、芝生のグラウンドを使用する全てのスポーツにおいて取り返しのつかないことになり兼ねないでしょう。

この答え合わせは10年後、それ以降の未来になるかもしれませんが、いま私からはこう忠告させていただきます。

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