今回はカタールワールドカップ直前ということで、どのような芝生を使われているのか、そして刈高はどの程度なのかといったことをFIFAの芝生担当者から聞きましたので、記事にしたいと思います。
最後には少しお知らせがありますので、ぜひご覧ください!
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今までも芝生に関しての記事をたくさん書いてきましたので、
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芝生の種類
まず、全てのスタジアムではseashore paspalum(シーショアパスパラム、以後パスパラムと略)を使用しています。そしていくつかのトレーニング施設においてはバミューダグラス(ティフトンなど日本で多くの練習場や試合会場で採用)を採用しているそうです。
どのトレーニングセンターなのかといったことまで詳しく聞けませんでしたが、基本的に日本でいうところの夏場で使用している耐暑性に強い芝生が使われています。芝生の品種についてもう少し詳しく見ていきます。
追記:記載し忘れていましたが、全てのスタジアムにおいて寒地型の芝生の種を暖地型の芝生の上に播種(オーバーシード)を採用しています。
seashore paspalum(シーショアパスパラム)とは
このすべての試合会場で使用されているシーショアパスパラムとはいったいどのようなものでしょうか。
基本的にバミューダグラス(日本において夏場に多くのスタジアムで使用)に非常によく似た性質を持つ暖地型、いわゆる暖かい季節において成長する芝生。少し違うところがあるとすれば、バミューダグラスと比較して塩分濃度の高い土地でも成長すること、耐陰性(日陰でも育ちやすい)も高いところがあげられます。ただし、バミューダグラスと比較して寒さにはやや弱いです。
もう少し様々な特徴がありますが、これ以上は芝生管理技術面での話になるので、ここでは省略いたします。
土壌水分が少なくても成長でき、そして暑さに強い。さらにはスタジアムには必ず屋根がありそこでできる陰に対してもある程度の強さを発揮できるので、まさにこのワールドカップにうってつけの芝生といえるのではないでしょうか。
ちなみに日本では、鹿島スタジアムで採用された実績があります。
カタールの天気
次にカタールの天気について調べました。私が見た天気予報では、最低気温20℃前後で最高気温は35度前後まで上がることがあるようです。湿度は60%前後。まるで日本の夏のようですね。この条件を見ても、パスパラムが生育するのに最適な温度環境といえます。
芝生の長さ
芝生の長さが、おそらく最もサッカーの試合に影響する要因かと思われます。長さはFIFAの規定で20mm-30mmとなっています。多くのピッチが23mmくらいで用意してくるであろうと言われています。
この23mmというのは、ヨーロッパでは、寒地型の芝生で多くのリーグがこのくらいの長さで維持管理しています。一方で日本は、夏場の暖地型の芝生では10-20mm程度、冬場の寒地型の場合は大体同じくらいの長さで維持管理していると思います。
暖地型の芝生でこの長さだと、試合前に水を撒かなければボールの勢いはすぐに弱くなると思います。カタールの気温を考えると、散水した水が試合中に乾く可能性は十分考えられ、ボールが止まりやすくなるかと。
そのため、試合開始間際はパスワーク主体のチームはかなり気分よくボールを回せると思いますが、20分あたりから乾き始めると少し感覚が変わってくるので、選手たちも時間とともにコンディション変化に対応していく必要があるかと思われます。
私の考察
このカタールワールドカップですが、日本がグループリーグを突破できる可能性についていくつか考えてみました。
芝生
当然ながら、私が記事を書くにあたって芝生に関しては外せないので、その1つは芝生です。その理由は、いつも私がブログで書いているように、日本では暖地型の芝生を採用オーバーシードもしています。この芝生における環境はカタールの環境と似ています。
対して、ヨーロッパ諸外国、少なくとも私のいるイギリスでは暖地型の芝生をメインにしたピッチは聞いたことがありません。ドイツもおそらく気温的少ないでしょうし、あるとすればスペインでは温暖な気候なので、どこかのピッチでは採用しているかもしれません。
日本でも多くの選手がヨーロッパでプレーしていますが、少なからずプロ入り前やJリーグでプレーした経験のある選手たちは、暖地型の芝生でプレー経験がヨーロッパの選手たちと比較して多いはずです。
その点から踏まえると、日本の選手たちの方がヨーロッパの選手たちと比較して、ピッチコンディションに順応しやすいと思います。スパイク選びも非常に重要になってくるかと。
ただ、この考えから行くと、コスタリカは調べたところ場所によりますが、年間を通して25℃前後以上の熱帯に位置する国。この選手たちもまた、コスタリカのプロクラブでは暖地型の芝生を採用しているピッチでプレーしている経験があると思われるため、もしかしたら、、、があり得るかもしれませんね。
2014年のワールドカップでコスタリカとウルグアイが進出(おそらく気候的に暖地型の芝生を採用している)し、イタリアとイングランド(寒地型芝生を採用している国)が敗退したように、芝生の環境で番狂わせが起こったら、面白いですね!
また、戦術と芝生を絡めてみていくと、芝生が散水による水が乾き始めるまでの時間がドイツやスペインといったボール回しに長けたチームと戦う上では耐える時間になるかと。その時間をしのぎ、35分あたりにゴールが決まれば理想的な試合運びができたといえるのではないでしょうか。
気候面
次に気候的な面を見ていくと、上記の芝生について書いているときにも触れましたが、日本の夏場の環境に似ていると思われます。この気候の面でのアドバンテージは非常に大きいと思われ、いわゆる高温多湿の環境というのは、世界中の多くの人がすごく苦手とする気候のようです。
そのため、夏場に暑くて嫌でもプレーしている選出されたJリーガーたちは、大きなサプライズを起こしてくれるかもしれませんね!
まとめ
今回は芝生から見るワールドカップということで、FIFAの方からどんな芝生が使われているか、そして長さがどれくらいなのかを伺いました。また、選手や戦術にどのような影響を与えるのかについて書かせていただきました。
これをきっかけに、少しでも芝生に興味のある人が増えてくれると嬉しいです。
https://ikumi-honda.com/turfmanagementfootball/377/ https://ikumi-honda.com/turfcdipendent/319/
また、この2つのブログも、合わせてみていただけると、より芝生に関して理解が深まるかと思います。何故芝生の色が薄いのか濃いのかといったことも書かれているので、ぜひご覧ください!
そして最後になりますが、ここまで読んでくださりまして、誠にありがとうございます。
お知らせですが、日本対コスタリカ戦の試合会場の芝生管理を担当された、FIFAの芝生担当スペイン人のJorgeさんは、日本でもより多くの方が芝生に興味を持ってくれるようにと、私とのコラボを実現させてくれました!
スペインで芝生に関しての講義を行っています(内容は英語もしくはスペイン語で行います)。そしてこの講義を受けて証明書を受け取ると、ヨーロッパにおける芝生管理の講座を受けたという実績ができ、CV(履歴書)に記入することができます。今後ヨーロッパで芝生の仕事に就職したい、もしくは日本でも芝生管理をしている方で、ヨーロッパの芝生管理技術に関する講義に興味があるという方にとっては、2か月程度のオンラインで受講できる講義ですので、非常に有意義なものになるかと思います。
もし興味のある方は私までご連絡ください!少しでも多くの方が、私のようにヨーロッパの芝生管理に携わる人が増えることを願っています!
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